Pico Iyer
Issue 108
京都の光
ケン・ロジャーズはほぼ40年に渡り Kyoto Journal の編集者であり、多くの執筆者を育てた素晴らしい編集者であった。同時に彼は詩人であり、情熱的な巡礼者であり、彼の仏教徒としての生き方は彼の生活の隅々に及んでいた。彼は存分に「今」を生きた。鳥の鳴き声、12世紀に彫られた観音像、稲の発芽、京都の丘の上の夕陽こそが、ケンにとって世界の本当のニュースであった。彼が昨年11月に突然我々の前から姿を消したとき、我々は愕然とした。ケンの知性、温厚な人柄、地に足の着いた態度は、 Kyoto Journal の精神にとって本質的なものであった。彼の友人であり、また長期に渡るKyoto Journalの寄稿者であるピコ・アイヤーは、KJ 108 号で次のように述べている。
37年間、ほぼこの雑誌の誕生以来、ケン・ロジャースは私と京都との結節点であり、私の人生における最も光に満ちた意見交換の相手であった。何が私の頭、あるいは世界で起こっていても——たとえば選挙が上手くいかなかったとか、愛する人にがんが見つかったとか、新たな森林火災が起こったとかした時でも——私はメールボックスにケンの名前を見つけると、太陽はやがて昇ると、思えた。
私にとってケンのいない Kyoto Journalあるいは京都を想像するのは難しい。しかし私が108号——この幸先の良い番号自体が彼を喜ばせたであろう——を手に取れば、一つ一つの言葉の背後に輝く、澄んで開かれた精神によって、光と喜びの小径を通って導かれるのを再び感じる事ができるのである。