吉田繁
Issue 90
Border
2011年の東日本大震災と大津波の発生から数年後、写真家・吉田繁はその震災で2万人の命が失われた地域を訪れた。海に向かって祈る人々の姿に心を動かされ、彼は写真プロジェクト『BORDER』を、その祈りに捧げた。「私は写真の中で祈りに秘められたエネルギーを表現しようと試みました。祈るという行為は、平和を願う人々にとって不可欠なものだと感じるのです」と、彼は述べている。
併せて収録されたエッセイ『魂の通り道』の中で、作家ジョン・ダグイルはこう記している。「海岸に立つと、波が誘うように語りかけてくる… 広がる海原を背景に、シンプルでありながら優雅な日本の鳥居の象徴的な形が、見えざる世界への通り道を示しています。この門なき門は、日常と聖なる世界との象徴的な境界を示し、魂の世界へと通じる入り口となっています。」吉田の風景は、私たちをこの見えざる世界へと引き込んでいく。
吉田は世界中の樹木を撮影することで知られ、著書に 『地球最後の巨樹』 や 『日本遺産最後の巨樹』がある。