この血なまぐさい傷ついた我々の世界にも未だ美が存在する、隠され、激しく、途方もない形で。美は我々に独自なものであり、他者から優美さと共に感じとられ、強められ、再発見され、我々自身のものとなった。我々はそれを探し出し、涵養し、愛さねばならない。爆弾を作ることは我々を破壊するのみである。 ――アルンダティ・ロイ
—Arundhati Roy

Kyoto Journalの精神の根底にある中心テーマは Kyoto Journal 「平和」である。個人の平和であろうと世界の平和であろうと、Kyoto Journalのカウンターカルチャーの基本は反戦、反ナショナリズム、平和、想像力、ヒューマニズムという視点にある。

このテーマの最も強力な事例の一つは本号掲載のアルンダティ・ロイのエッセイ 『想像力の終焉』、核兵器への情熱的な糾弾である。広く称賛された彼女の最初の小説 『小さきものたちの神』, の一年後に発表された、このエッセイは今日さらに未来を暗示するものとなった。正気を失った時代に正気を訴えながら、彼女は, 「もし核戦争が起これば、我々の敵は中国でもアメリカでもないし、その相互の対立でもない。我々の敵は地球そのものとなるだろう。そして空、大気、土地、風、水、こうしたすべての要素が我々に敵として立ち向かってくるだろう。それらの怒りは恐ろしいものとなるだろう」と言う。

KJ 39号で、このロイの言葉には、東松照明による、長崎の原爆投下直後の惨禍の同じく強烈なイメージが添えられている。戦後日本において最も重要な写真家と評価されている照明は、1960年原水協(原水爆禁止日本協議会)から原爆の惨状を記録し、世界に発信するよう依頼を受けた。彼の日常使われるものの画像、核爆発の恐ろしい力によって歪み、破壊された腕時計や瓶、そして核爆弾の被害者である 被爆者のポートレートは人々の生活の小さな、個人的な細部に焦点が当たっているがゆえになおさら心に纏いつくのである。

このロイのエッセイのタイトルページには科学者・発明家で、当時アメリカ原子力委員会の高速度撮影専門の写真家として働いていたハロルド・エジャートンによる原子爆弾実験の画像が掲載されている。核爆発の一瞬の、眩い閃光が、爆発地点から7マイルの地点に置かれた特製の超高速度カメラにより捉えられている。東松照明の映像とは対照的に、この純粋で恐怖を覚えさせる力の記録には人間性のかけらもない。 

写真は東松泰子氏のご厚意により転載されたものである。

Original layout in Kyoto Journal 39 - 1999
website: misashin.com

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